人体で最大の関節、股関節の仕組み
人間の体にはおよそ200の関節があるとされますが、そのなかで最大のものが股関節です。
股関節は胴体と両足のつなぎめにあり、体重を支えるほか、立つ・歩く・しゃがむ・走るなどさまざまな動作を行う上で、重要な役割を果たしています。
股関節は強力な靭帯やたくさんの筋肉により覆われているため、非常に安定性の優れた構造になっています。
具体的には、以下の要素で構成されています。
- 大腿骨骨頭
大腿骨の先端にあり、ボールの形をした骨
- 寛骨臼(かんこつきゅう)
骨盤の外側にある骨。大腿骨骨頭とともに、股関節を形成している
- 臼蓋(きゅうがい)
骨盤にある寛骨臼の、お椀状になっている部分
股関節は球関節の一種であり、大腿骨骨頭というボールが、臼蓋というお椀のなかにすっぽりはまることで股関節が成り立っています。
臼蓋の内部を大腿骨骨頭がくるくると滑らかに動くため、股関節は比較的自由度が高いのです。
正常な股関節は、大腿骨骨頭が軟骨で覆われており、臼蓋と大腿骨骨頭は周囲の筋肉によりしっかりと支えられています。
股関節は「体重を支える」「歩く、座るなどの日常動作を支える」という二つの役割を担っていますが、これらの機能は人間が四足歩行から二足歩行へ進化する過程において、徐々に獲得されてきたものです。
人間が二足歩行をする上で最も重要な関節といえる股関節は、非常に緻密で精巧な作りになっています。
裏返せば、それだけ日常生活で負荷がかかりやすい関節であるため、故障が多く発生しやすい部位でもあります。
特に股関節は体重を支えることで日常的に大きな負荷がかかっており、人間が両脚で立っている場合、左右の股関節には体重の半分の重さがそれぞれかかっているとされています。
片足立ちになれば体重の4分の3の重さがその軸足の股関節にかかります。
また、歩行をするときには体重の3〜4倍の重さが股関節にかかりますし、階段昇降では6〜7倍、跳躍時には12倍もの重さがかかるとされています。(*1)
股関節は加齢に伴い、痛みなどの症状が出現しやすいのが特徴ですが、なぜ年齢とともにそうした症状が出るのかというと、関節周辺の軟骨が劣化したり、骨自体が変形したりするため。
いってみれば股関節の「経年劣化」が痛みなどの原因であり、裏返せば、できるだけ若いうちから股関節にやさしい生活を心がけ、股関節の老化を遅らせることが症状の抑制につながるのです。
人間は2足歩行の動物です。よって股関節は非常に大切な関節となります。ほかの関節と違うのは骨性部分の割合が多くまた強靭な靭帯、筋肉がしっかりしております。なるべく機能を減弱しないよう常日頃の運動や体重が増えないような日常生活習慣を心がけましょう。
痛い、違和感がある…など股関節のさまざまな症状
股関節に悩みを抱えている人は男女共に少なくなく、特に高齢になればなるほど自覚症状を覚える人は増加傾向にあります。
そのなかでもっとも多いのが、股関節の軟骨がすり減ることで骨同士がぶつかり、やがては骨が変形してしまう「変形性股関節症」ですが、それ以外にも股関節の悩みを引き起こす疾患はさまざまあります。
代表的な症状としては、以下のものが挙げられます。
- 太ももやお尻、股関節まわり(脚の付け根)や膝に痛みがある
- ゴルフのスイングをすると痛みが出る
- ランニングをすると痛みが出る
- 股関節の右だけ痛い(あるいは、左だけ痛い)
- 足の爪が切りにくくなった
- 靴下が履きにくくなった
- 股関節が痛くて歩くことができない
- 正座などしゃがみ込む動作が困難
- ときどき股関節が引っかかるような感じがする
- 長い時間立ったり歩いたりするとつらい
- 階段の昇り降りで手すりが必要
- 股関節が夜寝ていても痛む(夜間痛)
- 脚の付け根の曲げ伸ばしがしづらい
- 足の付け根に痛みや違和感がある
これ以外にも、場合によってはお尻や太もも、膝などに痛みが生じることもあります。
この場合、股関節にあまり症状を感じないこともあるため、原因が股関節にあるとはなかなか気づきにくいかもしれません。
なぜ、股関節に原因があるのにお尻や太もも、膝などに症状が出現するのかというと、人体の動きには「ジョイント・バイ・ジョイントアプローチ」という考えが基本にあるから。
ジョイント・バイ・ジョイントアプローチは、「各関節はそれぞれの役割を持って個別に働く一方で、複数の関節を協働させることで機能的な動作が可能になる」という考えに基づいています。(*2)
人間の関節には、「モビリティ関節(可動性が高く、動きやすい関節)」と「スタビリティ関節(固定性が高く、動きにくい関節)」の2種類があります。
たとえば、股関節は可動域が広いモビリティ関節ですが、腰の関節は姿勢を支える上で重要なスタビリティ関節です。
また、膝関節は歩行時に体重を支える上で大切なスタビリティ関節で、足関節は地面を蹴り上げるなど柔軟な動きが求められるモビリティ関節です。
このように、モビリティ関節とスタビリティ関節は、人間の関節に交互に出現し、隣り合った関節は互いに影響を及ぼすとされています。
そのため膝の安定性を高めたいのであれば、膝周辺の筋肉を鍛えるだけでなく、股関節の動きを良くすることも必要ですし、股関節の動きをよくしたいのであれば、膝や腰など隣り合うスタビリティ関節の機能を高めるのが重要なのです。
本来、股関節は自由度の高いモビリティ関節ですが、この動きが悪いと、その動きを代償すべく膝関節や腰関節(腰椎)にしわよせが来てしまいます。
股関節をかばうようにして、膝や腰が余計に働かなければならないからです。
そうなると、本来スタビリティ関節であるはずの膝関節や腰椎が動きすぎることになり、関節に多大な負荷がかかってしまいます。
そのため、「股関節が原因であるにも関わらず、膝や腰に痛みが生じる」といったことになるのです。
関節に痛みや違和感を覚えるときには、該当する関節だけで問題を解決しようとするのではなく、近隣の関節にも配慮することが必要です。
そうすることで関節同士がきちんと協働することができ、関節本来の機能的な動きを実現することができるのです。
(*2)公益財団法人 長寿科学振興財団
隣接関節障害という言葉があります。例えば股関節が悪くなったとしましょう。
股関節をかばって歩いている影響で隣の関節、つまり腰椎や膝関節といった関節も徐々に変形してきてしまうのが隣接障害です。この2次的な障害を引き起こさないためにも早期診断が必要です。股関節を治しても後々膝や腰の疾患でお悩みの方がいるので我慢せずに専門医の診断を受けるようにしましょう。
股関節の症状を引き起こす代表的な疾患
股関節の痛みなどを引き起こす疾患にはさまざまなものがあり、それぞれ原因や対処法が異なります。
股関節の疾患の多くは命に関わるリスクが少ないため、「痛みさえ我慢すればいい」と放置したり、マッサージなどでその場しのぎの対応をしたりする人も少なくありません。
また、「年齢とともに股関節の痛みが生じるのは仕方のないもの」とあきらめ、医療機関を受診したり、治療をしたりせずにそのままにしている人も多いでしょう。
しかし日常生活における痛みは確実に生活の質を低下させ、行動範囲を縮小させてしまいます。
また、痛みがひどくなればやがては外出したり、人と会ったりすることも億劫になったりして、社会的な交流が閉ざされてしまうこともあります。
痛みがさらに増せばなかなか離床できなくなり、寝たきりになる人も多いでしょう。
その結果、家に閉じこもった状態となり、やがては認知症のリスクを高めることも少なくないのが現状です。
現在は、痛みを改善するのにさまざまな治療法が開発されていますし、手術などによって根本的に疾患を治癒することができる場合もあります。
症状が軽症であれば体に負担が少なく、短期間の治療で済むことも多いので、股関節の症状に悩んでいる場合は、まずは原因を明確にするため、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
1. 変形性股関節症
変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減ることによって関節に炎症が生じ、痛みなどの症状が出現する疾患のことをいいます。
病態により、以下の二つに分類されます。
- 一次性変形性股関節症
原因がはっきりしない変形性股関節症。加齢変化、体重増加、スポーツや職業などによる過負荷が原因と推察される。
- 二次性変形性股関節症
先天異常や後天的な疾患により発生する変形性股関節症。生まれつき股関節が脱臼している「先天性股関節脱臼」や、臼蓋のかぶりが浅い状態である「臼蓋形成不全」が原因の大多数を占める。(*3)(*4)
これらのうち、日本で多いとされるのは二次性変形性股関節症で、変形性股関節症の約8割を占めるとされています。
反対に欧米人の場合には、原因不明の一次性変形性股関節症が8割ほど占めるとされており、日本と特徴が大きくことなることがわかっています。
変形性股関節症は進行状況によって以下の4つに分類されます。
- 前期
股関節の形状にわずかな異常が見られるが、まだ軟骨はすり減っていない。痛みなどの症状もない。 - 初期
軟骨が少しずつすり減り、関節の隙間が狭くなる。ただ、痛みなどの自覚症状はほとんどない。 - 進行期
軟骨がすり減り、関節の隙間がほとんどなくなる。本来軟骨に覆われているはずの骨同士が擦れ合うようになり、股関節の違和感や軽い痛みなどが見られる。症状が急激に進むこともある。 - 末期
軟骨がほとんど消失し、痛みが強くなる。歩行が難しくなり、日常生活に支障が生じる。
変形性股関節症を発症すると、前期や初期では足の爪切りが行いにくくなったり、靴下が履きづらくなったりします。
場合によっては長く立ったり歩いたりしたときに股関節が痛むことがありますが、それほど症状は見られません。
しかし進行期になると立ったり座ったりしたときや、階段を昇降したときなどに強い痛みを感じるようになり、手すりが必要になることもあります。
さらに末期になると、安静にしていても痛みが出たり、痛みのために夜間眠れなくなったりします。
また関節の変形が目立つようになり、股関節をまっすぐに伸ばすことができず、歩行が難しくなることもあります。(*3)
(*3)公益社団法人 日本理学療法士協会
(*4)日本医師会
2. 特発性大腿骨頭壊死症
日本では難病に認定されている疾患で、大腿骨頭の一部が血流の低下により、壊死してしまう疾患です。(*5)
特徴は、骨が壊死することと、痛みが出現することの間には時間的な差があるということです。
骨が壊死しただけでは、痛みなどの症状が見られません。
しかし少しずつ骨壊死した部分が体重を支えきれなくなり、やがて潰れて陥没変形してしまいます。
この段階になると痛みなどの自覚症状を発生させます。(*6)
ただし、骨壊死の範囲が小さい場合には陥没変形を起こさないこともあり、この場合には生涯、壊死に気づかないこともあります。(*5)
特発性大腿骨頭壊死症は現在日本において、年間で2000人程度発症することが知られていますが、これを引き起こす原因は、今のところ解明されていません。
ただし、ステロイド、アルコール、喫煙が危険因子と考えられ、特に男性ではアルコール多飲、女性ではステロイド(副腎皮質ホルモン)剤の服用に関連し、発症することが多いとされています。(*6)
特発性大腿骨頭壊死症を発症し、壊死した部分に陥没変形が生じると、比較的急に股関節痛が生じることが知られています。
そのほか、腰痛、膝痛、殿部痛が起きることもあります。
ほとんどの場合、こうした痛みは2〜3週間安静にすることで軽減されていきますが、大腿骨頭の圧潰や変形が進むにつれて、再び症状が増悪します。(*6)
(*5)難病情報センター
(*6)公益社団法人 日本整形外科学会
3. 臼蓋形成不全
健康的な股関節では、臼蓋が屋根のように大腿骨頭を覆うことで、体重を支えています。
しかし臼蓋形成不全の場合、屋根が発育不全となり、大腿骨頭を十分覆うことができません。
そのため、立ったり歩いたりする動作のときに大腿骨頭の安定性が悪くなり、炎症が生じて痛みなどの症状を発生させやすくなります。(*7)
さらに通常よりも小さな屋根で体重を支えなければならないことから、関節軟骨に少しずつダメージを与え、その結果軟骨がすり減ったり、骨に穴が空いたり、余剰な骨が形成されたり変性を起こすようになります。
若いうちにはまだ軟骨の厚みが保たれていますが、加齢とともに軟骨自体のみずみずしさが失われ、変性が進みやすくなると、変形性股関節症を発症させやすくなります。
研究によると臼蓋形成不全で、CE角(大腿骨頭の中心を通る垂線と、大腿骨頭の中心と臼蓋の外縁を結ぶ線が作る角度のこと。正常値は25度以上)が15度以下の場合には変形性股関節症へ移行しやすいことがわかっています。(*8)(*9)
臼蓋形成不全は「寛骨臼形成不全」とも呼ばれており、これを発症すると股関節周囲の違和感や脱力感を覚えたり、スポーツをしたあとに痛みが出現したりします。
ただし、初期ではこうした症状が出現しにくく、まったく気づかないということも少なくありません。
やがて病期が進行すると、動作の開始時や歩行時に痛みが生じるようになり、末期になると安静にしていても痛みが出たり、脚の長さが短くなったりすることもありますし、また、跛行(はこう)といって、庇うように歩いたり、足をひきずったりなど正常な歩行ができない状態に陥ることもあります。
臼蓋形成不全の原因にはさまざまなことが考えられ、遺伝的な要因、胎児期の姿勢、出生後の生活習慣などが関係していると推察されています。
特に日本人は欧米人に比べて臼蓋形成不全を発症する確率が高く、成人男性0〜2%、女性2〜7%に見られることもわかっています。
(*7)徳島県医師会
(*8)中学医学社
(*9)公益財団法人 日本股関節研究振興財団
4. 関節リウマチ
リウマチとは、「免疫の異常により関節の滑膜などに炎症を起こして腫れや痛みを起こし、進行すると関節の破壊、変形から機能障害に至る病気」と定義されています。(*10)
リウマチというと高齢者に多く見られる疾患というイメージがあるかもしれません。
確かに現在日本では、60歳代で発症する人が最多とされていますが、実際には若い人にも見られ、30歳以上の人口の1%にあたる人がリウマチを発症するとされています。(*10)
リウマチは人体の関節で発症する疾患です。
そのため場所を問わず、あらゆる関節で発症する可能性がありますが、特に多いのは指、手関節、肘、膝、足関節などとされています。
また、左右どちらかに症状が出現すると、もう一方の側にも症状が見られるようになるのも、リウマチの特徴です。
リウマチを発症すると、初期には熱っぽい、倦怠感がある、食欲がないなどの症状が続きます。
また「朝のこわばり」といって、起床時に関節を動かしにくく感じることもあります。
その後、手指などの小さな関節が腫れ、やがて全身の関節へ症状が広がっていきます。
さらに、リウマチの症状が股関節にも出現するようになると、軟骨のすり減りが進行したり、骨の変形が進んだりすることで痛みが生じることがあります。
リウマチの病態が進行すると関節の軟骨や骨の破壊が進み、関節の脱臼や変形などが見られ、日常生活に支障が生じたり、場合によっては介助が必要になったりすることもあります。
リウマチの原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患のひとつであると考えられています。
(*10)公益財団法人 日本リウマチ財団
5. 大腿骨頚部骨折
特に高齢者が股関節の痛みを訴える場合、考えられる原因に大腿骨頚部骨折があります。
大腿骨頚部とは、骨頭のすぐ下に続く細くなった部分であり、この部分を骨折することを大腿骨頚部骨折といいます。
人間は、この曲がった大腿骨で体の重さを支えていることから、ちょっとした外傷や転倒などで骨折を引き起こしやすいのです。
ちなみに大腿骨は頚部と呼ばれるくびれた部分と、転子部(てんしぶ)と呼ばれるふくらみからできています。
この転子部を骨折することを大腿骨転子部骨折といい、大腿骨頚部骨折に並び、高齢者に多く見られる外傷です。
大腿骨頚部骨折を引き起こすと、脚の付け根付近に大きな痛みを感じ、立ったり歩いたりすることが困難になります。
原因としては、転落や転倒などが考えられますが、もともと骨粗鬆症で骨が脆くなっていることが背景として考えられることから、高齢者に多く見られるとされています。
股関節の痛みや違和感に対する「保存療法」「手術療法」
股関節の痛みを放置するとさらに病期が進行し、場合によっては寝たきりになるリスクもあります。
そのため症状を感じたら、できるだけ早めに医師の診察を受け、適切な治療を受けることが必要です。
股関節の治療法には「保存療法」と「手術療法」の2種類があり、それぞれの症状や病態などに応じてどちらを選ぶか決定します。
1. 保存療法
手術を行わず、症状を和らげたり、病期の進行を遅らせたりすることを目的とするのが保存療法です。
症状などにより、以下の内容から選択します。
- 体重管理
肥満は股関節にかかる負担を増大させるのでBMIを指標にして体重管理を促す。
- 運動療法、筋力強化
股関節周囲にある筋肉や、大腿四頭筋など太ももの筋肉を鍛えることで、股関節の安定性が増し、股関節にかかる負担を軽減できる。
また、ストレッチを行うことで股関節の強張りが解除されて可動域が広がる。(*11)
- 生活習慣の改善
和式の生活ではなく、ベッドや椅子、洋式トイレなどを使う方が股関節への負担を軽減できる。
また、ハイヒールや底の硬い靴を避ける。(*11)
激しい運動、重労働、立ち仕事、長時間の歩行などを避ける。
- 温熱療法
ホットパックや極超音波などを利用して関節や筋肉の痛みを緩和し、血行を促す。家庭での入浴や温泉も効果的。
- 薬物療法
除痛がひどい場合には消炎鎮痛剤や湿布薬、軟膏などを用いる。
そのほか、コルセットやヒールクッション、 ヒップサポーター、 ステッキなどの装具を使用した装具療法を行うこともあります。
(*11)独立行政法人 労働者健康安全機構
保存的治療は様々です。基本は筋力訓練だと思います。
股関節周囲筋の筋力トレーニングは特に重要です。大殿筋ストレッチ、腸腰筋ストレッチ(股関節前方)、大腿筋膜張筋ストレッチ(大腿外側)。この3つは主に行っていきましょう。
またエコーを用いて関節内注射を行います。痛み止め薬が入っていたりPRP療法(多血小板血漿療法)も当院で可能です。気軽に相談してください。
2. 手術療法
保存療法を行っても改善が見られない場合には、手術療法が適応になります。
股関節の疾患に対する手術には、主に以下のものがあります。
- 関節温存手術(骨切り術)
骨切り術とは、骨盤の一部を切除して通常の位置からずらし、股関節にかかる負担を軽減する治療法。臼蓋形成不全や変形性股関節症の治療として有効で、自分の股関節を温存できるというメリットがある。
ただし、入院やリハビリ期間が長く、社会復帰に時間がかかるというデメリットもある。
- 人工股関節置換術
関節が変形したり、軟骨がすり減ったりした部分を切除して、人工関節に置換する治療法。特に変形性股関節症や特発性大腿骨頭壊死症の治療として行われている。
人工関節に置き換えることで痛みが取り除かれ、関節の動きがスムーズになり、関節が安定するというメリットがある。
ただし人工股関節の脱臼や感染症などのリスクがあるほか、術後は深く関節を屈曲するなど、股関節に負荷をかける動きは人工股関節の緩みや摩耗の原因となるため、避ける必要がある。
これらのうち、どちらの治療法を選択するかは、症状や病態、患者の年齢などによって異なります。
たとえば変形性股関節症の場合、「患者の年齢が若く、変形が少ない」という場合には骨切り術を、また、「変形が重度に進行している」という場合には人工股関節置換術が選択されることが多くなります。
当院では、前方アプローチ法による人工股関節置換術を行っております。
従来の術式である後方アプローチ法は、筋肉を切る必要があるため回復まで時間がかかってしまいます。さらに術後脱臼するリスクも高まります。
一方で前方アプローチ法は、筋肉を切らない方法なので術後早期の回復が可能であり、また脱臼するリスクも回避できます。さらに前方アプローチは後方アプローチと違い仰向けで手術を行うので、足の長さも反対の足と同じ長さに調節しやすいメリットがあります。
股関節に異変を感じたら早めの受診を
股関節は人体でいえば、要にあたる重要な部分。ちょっとした異変や痛みに気づいたら、早めに整形外科を受診するようにしましょう。また、ストレッチを日課にすることも股関節痛の解消には役立ちます。なかには寝ながらできるストレッチもあるので、習慣にしてみてはいかがでしょうか。